がんとオムツと反抗期。

ステージⅣの肺がん患者の義母と認知症疑いの義父、思春期の子どもに囲まれたもやもやを吐き出すために書いてます

現実にあった病院コント

コロナのせいで患者以外は入院病棟に足を踏み入れることができない。

一度入院したら最後、面会もできない。

お義母さんとは入院病棟に向かうエレベーターの前でお別れとなる。

といっても、肺の細胞を採る手術は一日の入院で翌日お迎えなんだけど。

 

エレベーターの前で看護師さんが迎えに来てくれるのを待っていたら

エレベーターホールに入院患者らしき人がストレッチャーで運ばれてきた。

周りをご家族らしき人が数人取り囲んでいる。

 

(よほどの理由があれば面会できるのかな?)

 

と思っていたら、患者の息子らしき人が叫び出した。

 

「お父さん!お父さん!
あそこはもう売りに出しますから!
ここにサインしてください!」

 

と必死でなにやら書類を渡そうとしている。

 

ちなみにお父さんと呼ばれた患者さんは虚空を見つめている。

書類どころか息子さんが何を言っているのかも理解できていない様子。

 

そこで息子の奥さんか娘らしき女性が

 

「お父さん、書類読めないんじゃ…」

 

とつぶやく。息子は構わず続ける。

 

「お父さん!ほら、しっかりして!!
ペン、ちゃんと持って!!!
自分の名前くらい書けるでしょう!!!」

 

お父さん、相変わらずどこかに行っちゃってる顔。

 

(かわいそうすぎる…)

 

こんな人目の多い場所で繰り広げられる人生ドラマ。

息子さんの必死さがなんだか滑稽で笑えてくる。

 

そしたら、うちのお義母さんがにやにやしながら

 

「私もなにかサインした方がいい?
サインした方がいい?」

って言ってきた。

 

絶対彼らに聞こえてるだろう声で。

 

(やめてくれえええええええ!!!)

 

いろんな意味で年は取りたくないなと思いながら、お義母さんを見送った。

 

 


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