一歩引いて見れる人が一人いないとね
「もういつ死んでもいいんです」
診察室でお義母さんはつぶやいた。
がんを告知されても取り乱すこともなく淡々と
「うちは母もがんで、体中切り刻まれて死にました。
母が亡くなった年は超えられたので、もう大丈夫です。
痛くないように苦しくないようにだけお願いします」
…すごい。
(ほんとは死ぬほどショックうけてるのかもしれないけど)
その後、夫に報告。
夫、ショックで呆然となる。
(そうだよね。そりゃそうだよね)
明らかにお義母さんより動揺を隠しきれていない…。
おまけにショックで寝込む。
数日経っても立ち直ってない。
「実家に今まで以上に顔見せなきゃと思うんだけど…。
お母さんの弱った姿、見たくないんだよ…」
(そうこうしているうちにどんどん弱るんじゃ…)
そしてうちの子(小学生)にはいつ、どう伝えようかと迷っていたら…
「ねえ、おばあちゃんって肺がんなんでしょ?
おばあちゃんが『私、肺がんになったから』って言ってたよ!」
心配無用だった。
割とナイーブな子なので泣いちゃうんじゃないかと心配していたけれど、お義母さんの伝え方があっさりしていたせいか、がんって治るんでしょ?と思っているっぽい。
「おれの成人式まで生きてるといいなぁ」
なんて夫の前でつぶやき、空気を凍らせてくれた…。
8年後。
治療がうまくいけば生きてるでしょう。
私はお世話になった人ではあるけれど、実の娘でもないし
「まあ、死ぬ時が来たら死ぬんだろうけど、今あたふたしても仕方ないからやれることをやるしかないよね」
くらいの気持ちでいる。
夫はメンタル的にダメそうだし、義父は年寄りで戦力にはならないから、私がしっかりしないとダメだなと思った。